相続対策
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相続対策の考え方
相続対策には、相続税をできるだけ軽減する節税対策、相続税を無理なく支払えるようにする納税対策、相続財産を相続人の間で円満に分配する分割対策がある。
バブル経済が華やかな頃は、地価の高騰に伴い土地の相続税評価額が上昇、相続税も高くなったので、相続税を減らすために、行き過ぎとも思われる節税対策が実行されたが、バブル経済崩壊後は、地価は急激に下落したため、今後は被相続人や相続人のライフプランを重視して、節税対策、納税対策、分割対策をバランスよく実行すべきである。
日本の場合、相続財産の6割強を土地が占めているが、この割合は相続財産が多くなるほど高い。したがって、相続対策の大半は土地所有者(地主)への対策となる。
ところで、相続対策を立案、実行するには、税法の知識が不可欠である。ところが、時間の経過や税制改正等により、実行した対策の効果も薄れることがあ る。税理士等の継続的な関与が望まれる。バブル経済崩壊後、このような継続的な関与を怠ったため、実行した対策がかえってマイナスに作用している場合も多い。
節税対策
節税対策は、相続税をできるだけ減らすための対策(相続税対策)であるが、相続税だけでなく、贈与税、所得税等の税負担を総合的に勘案しなければならない。節税対策は、移転対策と評価減対策の2つに大きく分かれる。移転対策は、被相続人が財産を所有していると、相続財産となるので、相続税の負担を少なくするために、次世代に財産を移す対策である。基本は贈与で、相続税の税率と比べながら、贈与する財産と贈与を受ける人を吟味して、贈与税の特例等を上手に活用しながら、長期的計画的に財産を移転するのがコツである。
評価減対策は、財産の価値を実質的に減少させることなく、時価と相続税評価額との乖離を利用して、相続財産の評価額を引き下げる対策である。たとえば、現金預金で所有するよりは、他の財産のほうが相続税評価上有利な場合がある。また、更地に賃貸マンションを建築して、土地の評価を自用地価額から貸家建付地とすると同時に、現預金や借入金で建物を購入して評価を下げる等の対策は、以前からよく実行された対策である。
納税対策
節税対策を実行しても相続財産が多額の場合、相続税をゼロにすることは容易でない。納税資金が多額でも、十分な金融資産があればよいが、ない場合は、いかに相続税を上手に納めるかが重要なポイントになる。
納税対策では、納税方法と納税資金の調達方法に留意する。
納税方法には、現金一括納付(即納)、延納、物納がある。即納や延納の場合は、相続財産や相続人固有の財産の売却を検討するが、とくに即納の場合は、時間的な制約から、売却のタイミングを見失うことも多い。即納できない場合は、延納、物納を選択することになるが、一定要件を満たさなければならない。
したがって、相続発生前に納付方法も検討し、延納、物納を予定しているならば、それぞれの要件を満たすように、財産の分割方法を決定しておき、それに伴って財産を整理しておかねばならない。不動産を売却して現金化したり、生命保険に加入するなど財産の一部を金融資産などに組み替えることも検討する。
分割対策
分割対策は被相続人の死亡後、残された相続人で争いが発生するのを防ぐための対策であるが、相続税が課税されない程度の相続財産でも、相続人が複数いると、相続財産を巡って、相続人同士で争いの発生する余地は十分ある。
ところで、生前から遺産分割の話合いをすることに、抵抗のある人は多い。具体的な遺産分割案を検討しながら、納税対策と節税対策を実行していかないと、実際の相続のときに、大きなトラブルとなる可能性もあることを理解しておく必要がある。
遺産分割の方向性が決まったら、それを法的に担保する手段として、遺言書の作成が勧められる。法的要件を満たした遺言書を作成し、将来の遺産分割トラブルを事前に回避することが、分割対策において重要である。
また、分割が困難な土地等を所有している場合、相続人間で分割が容易な資産に変換することも有効である。状況によっては、特定の相続人が、相続財産の大半を取得するかわりに、自己の固有の財産を、他の相続人に渡すという代償分割を利用する。