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Ⅰ.会計のワンポイント・アドバイス
Ⅰ-1.AIは、会計士や税理士を不要にする?
Ⅰ-2.決算書ってナニ?
Ⅰ-3.貸借対照表のカタチ?
Ⅰ-4.貸借対照表の右側をヨム
Ⅰ-5.貸借対照表の左側をヨム
Ⅰ-6.損益計算書のカタチ
Ⅰ-7.損益計算書をヨム
Ⅰ-8.キャッシュフロー計算書のカタチ
Ⅰ-9.キャッシュフロー計算書をヨム
Ⅰ-10.決算書の分析
Ⅰ-11.粉飾決算を暴く!
Ⅰ-12.試算表は必要なし?
Ⅰ-13.不良債権の会計処理
Ⅰ-14.繰延税金資産ってナニ?
Ⅰ-15.中小企業と繰延税金資産
Ⅱ.税務のワンポイント・アドバイス
Ⅱ-1.領収書があればOK?
Ⅱ-2.経費になる?ならない?
Ⅱ-3.飲食代は経費になるのか?
Ⅱ-4.法人税と所得税 どっちが高い?
Ⅱ-5.役員賞与はソン?
Ⅱ-6.帳簿や領収書はいつまで保存するのか
Ⅱ-7.税務署に届けておこう!
Ⅱ-8.給料を支払うとき
Ⅱ-9.不良債権の税務処理(前編)
Ⅱ-10.不良債権の税務処理(後編)
Ⅱ-11.売上の分割計上
Ⅱ-12.1台25万円のパソコンも経費に?
Ⅰ-1.AIは、会計士や税理士を不要にする?
AI(人工知能)が普及すると会計士や税理士が不要になるという話がある。AIは、単なる計算だけでなく判断もするから会計士や税理士は不要ということでしょう。
しかし「現場」から見ると、会計士や税理士の仕事の本質を全く理解していないお話。
もっとも、計算だけしかしない、できない会計士や税理士もいるようだが(笑)。
会計処理の99%はルーチンの繰り返し、問題となるのは残りの部分で、その部分が会社の決算に重要な影響を与える場合が多い。
残りのルーチンから外れる部分は、過去、現在、そして将来も見据えた専門家の解釈や判断が必要なところである。
ただ会計処理がどんどん複雑化し、証憑等と会計処理のインターフェイスやストーリー性がより大きな問題になってくることは確実と思われる。
いずれにしても会計士も税理士もしぶとく生き残るでしょう(笑)
Ⅰ-2.決算書ってナニ?
決算書(財務諸表)は、会社の健康診断書や成績表のようなもので、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書をいい、キャッシュ・フロー計算書を含めることもある。
貸借対照表は事業年度末時点の財産の状態を、損益計算書は事業年度における収益と費用の状況(経営成績、業績)を、株主資本等変動計算書は純資産の動きを、キャッシュフロー計算書は資金の動きを、それぞれ表す。さらに株式を上場している会社(上場会社)は、その会社だけでなく、グループ会社全体の決算書である連結財務諸表も作成しなければならない。上場会社は、個々の会社より、グループ全体の決算書を重視する。
会社は規模に関係なく、1年に1回は決算を行い、決算書を作成して、株主総会に報告、承認を得なければならない。また、決算書を基礎に法人税申告書を作成し、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳書を添付して税務署に提出する。
決算書は簿記の知識がないと作成できないが、簿記の知識がなくても理解はできる。決算書を読むことは、コツさえつかめば、それほど難しくない。
Ⅰ-3.貸借対照表のカタチ?
貸借対照表は右と左に分かれる。右側には負債と資本。左側には資産がある。
右側は、どこからオカネを調達してきたかを示す。負債は他人のオカネで、返さなければならない。いわば借金。今のご時世、負債が多いことはあまり歓迎されない。資本は自分のオカネだから返す必要もない。資本は多いほど安心である。
負債は1年以内に支払うか否かにより、流動負債と固定負債に分かれる。流動負債は、買掛金や支払手形、借入金、未払金など、固定負債は借入金などがある。
資本は資本金、資本剰余金、利益剰余金にわかれる。資本金や資本剰余金は、株主が払ったオカネである。利益剰余金は会社が稼ぎ出したオカネで、過去の利益の蓄積である。
左側は、オカネを何に使ったのかを示す。資産は流動資産と固定資産からなる。
流動資産は、現金預金、売掛金や受取手形、商品など1年内に現金化される資産である。固定資産は、土地や建物などの有形固定資産、電話加入権やソフトウエアなどの無形固定資産、投資有価証券や保険積立金などの投資その他からなる。
Ⅰ-4.貸借対照表の右側をヨム
貸借対照表は、まず、資産合計(=負債+資本)に対する資本の割合を見よう。この割合を自己資本比率(株主資本比率)というが、この比率が高いほど、資産全体における資本の割合は高くなるので、財務的に健全といえよう。なお、資本がマイナスの場合(債務超過)、倒産寸前と見なされ、きわめて危ない状態である。
投資の回収に長期間要する固定資産は、自己資金(資本)や長期の負債で取得することが望ましい。資本と固定負債の合計額に対する固定資産の割合を固定長期適合率というが、この割合は100%より小さい(固定資産が少ない)ほうが健全である。
また、借入金と割引手形の合計額が、年間売上高(年商)の半分を超えている場合、一般的には、資金繰りがかなり苦しいといえる。
流動負債に対する流動資産の割合を流動比率という。これは100%より大きいのが通常である。
すなわち、流動負債を支払っても、まだ流動資産が残らない状態でないと、資金的には厳しいからである。この流動比率は固定長期適合率の裏返しでもある。
Ⅰ-5.貸借対照表の左側をヨム
売掛金や受取手形は売上債権といい、売上を計上したが、まだ現金になっていない資産(未回収の売上代金)である。ポイントは、売上高の何ヶ月分 が売上債権に計上されているか(売上債権回転期間)である。この期間が長いと資金繰りが苦しく、不良債権や架空資産(架空売上)が隠されていることもある。
商品などの棚卸資産についても、売上高もしくは売上原価に対して、何ヶ月分の商品等を所有しているか(棚卸資産回転期間)をみる。この期間が長いのは、多くの棚卸資産を所有していることであり、不良商品や架空商品がある可能性が高い。
ところで、仮払金のなかには、利益を出すために経費にできない支出が計上されている場合がある。架空資産の可能性が高く、その内容に注意すべき科目である。
土地や有価証券、ゴルフ会員権にも着目したい。貸借対照表に計上されている金額は、原則として取得した時の価額であり、時価ではない。どれだけ含み損(あるいは含み益)があるかも把握しておきたい。
Ⅰ-6.損益計算書のカタチ
損益計算書は、売上高と各利益金額を見ていくのがコツである。
売上高から売上原価を差し引くと、売上総利益(荒利益、粗利益)である。売上総利益から従業員給料や広告宣伝費、家賃などの販売費及び一般管理費(経費)を差し引くと営業利益である。営業利益は本業から稼ぎ出した利益である。
営業利益から、受取配当金などの営業外収益を加え、支払利息などの営業外費用を差し引くと経常利益が算出される。経常利益は日常の経営活動から稼ぎ出した利益である。
経常利益から、投資有価証券売却益などの特別利益を加え、固定資産売却損などの特別損失を差し引くと、税引前当期純利益となり、さらに、法人税や住民税等を差し引くと当期純利益が算出される。すなわち、経常利益から営業に直接関係のない臨時的に発生した損益や税金を加減して、最終の利益が算出される。
なお、売上原価は、売上高に対応する商品等の仕入価格である。期首に残っていた商品等に当期の仕入高を加え、期末に残っていた商品等を差し引いて算出する。
Ⅰ-7.損益計算書をヨム
売上高、売上総利益(粗利益)、営業利益、経常利益、当期純利益の各利益金額の数値と、各利益金額の売上高に対する割合(利益率)がポイントである。
売上高は年商ともいい、会社の規模を示す。利益のモトだから、大きいほうがよいが、利益がなければ「貧乏暇なし」になる。利益とのバランスが重要である、このような意味において、売上総利益は、ある程度の金額や割合がないと、赤字決算を強いられる。
営業利益がプラスであることは、会社存続の最低条件である。赤字(営業損失)が3期も続けば、かなり厳しい。経常利益も同じことが言える。
経常利益は最も重要で、会社の実力を示す。総資産経常利益率(ROA;経常利益に対する貸借対照表の資産合計の割合)は、収益性を判断するには最も優れた指標である。
特別利益や特別損失は、当期純利益のツジツマあわせをするために計上されることが多いので内容に注意する。
利益金額そのものや割合は重要であるが、利益金額の内容にも注意して欲しい。
Ⅰ-8.キャッシュフロー計算書のカタチ
キャッシュ・フロー計算書は、企業活動により、資金をどれだけ獲得し、どのように利用したか、資金の過不足をどのように運用、調達したかを表す決算書である。
上場会社はキャッシュ・フロー計算書の作成を義務付けられている。非上場会社の場合、作成する必要はないが、会社の実態を把握するために非常に役立つ。
キャッシュ・フロー計算書は三つに区分されるが、キャッシュとは、現金、当座預金や普通預金、期日3ヶ月以内の定期預金等をいう。
◆営業キャッシュ・フロー
商品等の販売収入や商品等の購入支出、販売費や一般管理費の支出などの営業活動からのキャッシュ・フローの増減
◆投資キャッシュ・フロー
固定資産や有価証券の取得や売却、投融資の支出や回収などの投資活動からのキャッシュ・フローの増減
◆財務キャッシュ・フロー
借入や株式等の発行による資金の調達や返済などの財務活動からのキャッシュ・フローの増減
Ⅰ-9.キャッシュフロー計算書をヨム
営業キャッシュ・フローは本業から獲得したキャッシュゆえ、プラスになっていることが会社存続の最低条件である。マイナスの会社は、営業活動によりキャッシュが減っていることを意味するので、危険な状態にある。マイナスの会社が損益計算書で利益を計上している場合、粉飾決算の可能性もあるから注意しなければならない。
一方、投資キャッシュ・フローや財務キャッシュ・フローは、プラスにこだわる必要はない。たとえば、投資キャッシュ・フローは、土地等を売却すればプラスに、設備投資を活発にすればマイナスになる。財務キャッシュ・フローは、増資や借入をするとプラスに、借入金を返済すればマイナスになる。
個々の会社のおかれた経営環境によって、プラスやマイナスの意味が異なるので、ケース・バイ・ケースの判断が必要となるが、基本的には、営業キャッシュ・フローで得たキャッシュ(プラス)を、投資キャッシュ・フローに投下し(マイナス)、財務キャッシュ・フローで調整(プラスもしくはマイナス)する。
Ⅰ-10.決算書の分析
決算書の分析は、決算書の数値や比率を、時系列的に、あるいは同業他社と比較することから始まる。時系列的には、過去5期間程度の傾向およびその要因を把握したい。同業他社との比較では、たとえば、「中小企業の経営指標(中小企業庁編、同友館)」などの資料で比較する。
また、業種業態特有の重点科目にも注意する。たとえば貸借対照表項目において、商社であれば売上債権、メーカーは固定資産などである。
キャッシュ・フロー計算書も重要である。損益計算書や貸借対照表では、わからなかったことが見えることも多い。キャッシュ・フロー計算書は、損益計算書と期首(前期末)と当期末の貸借対照表があれば、おおよそ作成できる。
決算書は過去の結果だが、決算書の分析の目的は、会社の強みや弱みを数値で認識したうえで、強みを伸ばし、弱みを克服する戦略を考えることである。過去の数値のみに一喜一憂していても、次の戦略につながらない。
Ⅰ-11.粉飾決算を暴く!
中小企業は、大企業と異なり公認会計士監査などの抑止力がないので、粉飾決算をしている可能性は高い。とくに、黒字額の小さい会社は粉飾をしていると思ってよい。
ところで、粉飾のパターンは決まっている。売上の嵩上げ、在庫の水増し、経費の資産計上、仕入の過少計上などが代表的である。大学時代のゼミの教授(会計監査論)によると48手あるそうだ(デモ全部を教えてくれなかったが…)。しかし粉飾しても、会計の仕組み上、どこかでボロが出てくる。ツジツマがあわなくなる。
そこで、業界における売上や利益の動向との比較、売上債権や棚卸資産・仕入債務等の残高、売上債権回転期間や粗利益率など各種比率の傾向を時系列的に見ていく。一期分の決算書ではわからなくても、3期分あれば、おおよそ見えてくるであろう。
怖いのは、経営者自身、どの程度粉飾しているのかわかっていない場合である。これは、きわめて危険な状態。実態を把握できなくなった会社は、航路図もGPSもなく、闇夜を漂流する船と同じく、座礁して沈没する運命にある。
Ⅰ-12.試算表は必要なし?
決算は1年に1回なので、決算書も1年に1回しか作成しない。事業年度の途中(期中)ならば通常、試算表を見る。銀行の融資を受けるときも、期首から直近月までの経営状態を検討するために試算表が要求される。
試算表は、貸借対照表と損益計算書が一緒になった表であるが、小職は、経営者の説明に、あまり試算表を使わない。
期中における経営は、損益中心に見たい。したがって、試算表より、前期比較ができる月次損益推移表を使う。貸借対象表項目は、全項目が毎月問題になるワケではない。貸借対照表科目は結果である。ただし、貸借対照表項目を無視するわけではない。当然、小職は貸借対照表を見ており、重要科目や変動科目について、補足的に説明する。なお、状況により、試算表を使う場合もあることは、いうまでもない。
経営者は忙しい。試算表を読むことは重要であるが、もっと重要なことも多い。「会社は儲かってナンボ」である。小職はそのためにサポートする。会計の狂信者ではない。
Ⅰ-13.不良債権の会計処理
会社は、債権について回収不可能と判断した額を費用に計上するが、その額が法人税法においても損金と認められるわけではない。法人税法の許容する金額を超える金額を費用とする場合、その超える金額は法人税法上、損金にならない。税金を負担して費用とすることになるが、会計上の一定要件を満たすと、繰延税金資産を計上することができる。これにより、費用とした金額の一部を資産に計上する。
費用とした額は、特別損失または営業外費用となる。販売費及び一般管理費ではない。
債権金額の全部または一部を直接、債権金額から減らして、費用とした場合、貸借対照表には、減額された債権(全部減らすとゼロ)が計上される。直接減らすのではなく、費用相当額を貸倒引当金で計上する方法もある。減額後の債権や引当対象債権は、売上債権であれば「固定化営業債権」など勘定科目名を変更して、「固定資産」の「投資その他の資産」に計上する。対応する貸倒引当金も「投資その他の資産」に、マイナス計上する。
なお、会計上、費用計上したからといって、回収をあきらめる必要はない。
Ⅰ-14.繰延税金資産ってナニ?
銀行に限らず、「繰延税金資産」を計上している上場会社は多い。そもそも繰延税金資産は、会計と税務(法人税)の考え方の違いから計上される。会計では費用になっても、税務では損金(税務上の費用)にならないケースがあるからだ。
たとえば、ご存知の「不良債権」。会計上は費用でも、税務上、一定の要件を満たさないと損金にならない。不良債権を償却(会計上の費用)しても、損金にならないと、税金(法人税等)はかかる。でも将来、税務上損金になる時期が来れば、その時の税金は安くなる。会計と税務では、タイミングがズレルので、その間、繰延税金資産の出番となる。
しかし、税務上の赤字であれば税金を支払う必要はない。不良債権が税務上損金になった時、赤字であれば支払う税金がないので、それ以上税金は安くなることもない。繰延税金資産の計上根拠はなくなる。つまり、繰延税金資産は将来の黒字を前提にしている。
繰延税金資産は、割引券みたいなもので、お金(将来の黒字)があって、始めて使える。お金がなければ、割引券だけ持っていても価値はないのと同じナノダ。
Ⅰ-15.中小企業と繰延税金資産
上場会社では繰延税金資産を計上しているが、非上場会社でも、繰延税金資産を計上しても良いのか? … 答えはYES。
しかし繰延税金資産は、現在は損金(税務上の費用)にならないが、将来は損金になる費用の計上が大前提。中小企業の実務では、費用と損金は一定のものを除いて、ほとんど一致させているので、繰延税金資産を計上する機会はあまりないであろう。
さらに、将来の黒字も大前提。日本の会計実務をリードする日本公認会計士協会では、過去3期間、毎期、繰延税金資産を上回る黒字を計上していれば、繰延税金資産を問題なく計上できるとしているが、それ以外の場合、翌期以降の5期間の課税所得(税務上の黒字)の見積額の範囲での計上を認めている。しかし、過去3期間赤字や債務超過(資本勘定がマイナス)であれば、繰延税金資産を計上する余地はないとしている。
経営環境が厳しく、収益基盤が必ずしも堅固でない中小企業の場合はどうであろうか?どんな会社でも計上できるものではないことだけはタシカだ。
Ⅱ-1.領収書があればOK?
領収書があれば会社の経費(損金)になると思っている人は多い。
領収書は金銭を支出したことの証明になるが、会社の業務のために使った経費であるかどうかはわからない。会社の業務に関係のない支出であれば、会社の経費にならず、会社が肩代わりして支出したことになり、支出をさせた人に給与等として所得税等が課税される。
領収書をもらったら、宛名(個人名でなく会社名)、日付や金額、内容などを確認する。これらの記載がなければ、領収書に書いておく。百貨店の領収書など支出内容がわからない場合、領収書の裏側等に支出内容を書いておかないと、税務調査時の説明に困る。
また、飲食代は、領収書の裏側に、誰と飲食したのかを記載しておく。商談などの用件であれば、その旨も記載しておくと良い。とくに多額の支出の場合は要注意である。
領収書がない場合は、支出した証拠が必要である。振込受領書、カード支払の明細書、契約書などがあればよいが、これらがない場合、支出した日付や金額、内容を立証することは通常、困難である。きちんと領収書は保管しておこう!
Ⅱ-2.経費になる?ならない?
会社が支出した経費のなかには、会社の税金(法人税等)の計算において、損金になる支出とならない支出がある。俗に経費になる、ならないなどといわれている。
たとえば、接待交際費は、法人税法上は損金にならない。ただし時限立法(租税特別措置法)にて一部を損金としている。
損金にならないということは、たとえ支出しても、法人税等が課税されるということである。支出によりお金はなくなり、税金もかかるので、ダブルパンチである。
どれだけの負担になるか?損金にならないと、おおよそ2~3割負担が大きくなると思ってよい。10万円の支出が実質12~13万円の負担になるワケで、結構高くなる。
損金にならない支出は、いろいろあるが、接待交際費のように一定限度額まで損金になるものもあれば、役員賞与のように原則として損金にならないものもある。
お金は税金のことも考えて上手に使おう。
Ⅱ-3.飲食代は経費になるのか?
飲食代は、どのような場合でも、法人税上の経費(損金)になるわけではない。
家族や友人との飲食など会社の業務に関係ない飲食代は、損金にならない。会社が支出している場合、役員であれば、役員賞与として損金にならず、役員個人にも所得税等が課税される。
社員との飲食代は、通常、福利厚生費や会議費などの損金になる。ただし、二次会にカラオケやスナックなどに行けば、接待交際費とされ全額が損金になるわけではない。
取引先との飲食など会社の業務に関連した飲食代は、平成18年度税制改正において、1人当たり5,000円以下であれば、接待交際費ではなく会議費等にできる。
ただし、伝票等に、飲食した年月日、飲食した相手先等の会社名・役職及び氏名とその関係、参加者数、支払金額、飲食店名及び所在地を記載する必要がある。
なお、5,000円を超えた場合でも、通常要する程度であれば会議費等になるのは、従来どおりである。
Ⅱ-4.法人税と所得税 どっちが高い?
会社の税金(法人税など)と個人の税金(所得税など)を比べると、会社の税金が高いと思っている人は多い。
会社が儲かっていて(あるいは儲かっていなくても!)、法人税を支払うなら、役員報酬をたくさんもらって、個人で所得税を支払ったほうがマシと考える経営者は多い。
しかし、会社の税金の割合(税率)は2割から3割程度だが、個人の税率は最高5割。役員報酬(役員の給料)なら給与所得控除という擬制費用があるものの、上限がある。ケースにもよるが、役員報酬を1,000万円もらっていたら、個人の税率は軽く3割は超える。
したがって一定限度額を超えると、個人で税金を支払うより、おとなしく(あきらめて)、法人で税金を支払うほうが結果的にトクになる。
中小企業は、社長個人と会社が一体の関係となっている。社長個人だけでなく会社も含めた総合的な観点から最適な税金のプランを考えたい。
Ⅱ-5.役員賞与はソン?
法人税では原則として、従業員の賞与は必要経費的に考え、損金にできるが、役員の賞与は原則として、損金にできない。したがって、法人税等を考えると、役員賞与の実質的な負担は支払額の3~4割増となる。
社長の奥様など親族の場合、身分は従業員でも、法人税では役員扱いとなるケースがある。この場合、奥様などに支払われた賞与も損金にならない。
役員に対して、毎月一定額を支払う給与(役員報酬)であれば、原則として損金になるので、この差はバカにならない。役員賞与相当分を上乗せして支払ったほうが、法人税等の負担は少ない。ただし、税務署にあらかじめ届出をしておく等の一定の要件を満たせば、役員賞与を支給しても損金になる制度(事前確定届出給与)はあるが、賞与の金額は届出時に決めなければならない。
なお、役員本人にとっては、役員報酬であれ、役員賞与であれ、いずれの場合も給与所得になるので、個人の税金(所得税等)の扱いは同じである。
Ⅱ-6.帳簿や領収書はいつまで保存するのか
帳簿や領収書、請求書などの書類はドンドン溜まっていく。かさばるので保管しておく場所も必要である。決算が終わったら捨ててしまいたくなるのも無理はない。
法人税法において、現金出納帳などの帳簿、貸借対照表などの決算関係書類、領収書や預金通帳などの保存期間は7年、契約書や納品書などは5年と規定されている。
また、会社法では帳簿や重要書類を10年間保存しなければならないと規定している。
にもかかわらず、税務調査が終了したら廃棄する場合もあるようだが、法人税法で7年もしくは5年の保存期間が規定されているわけであるから、当該期間は保存しておかねばならない。税務調査の有無と関係ない。実際にあった例であるが、前回の税務調査終了後に帳簿類を廃棄してしまい、3年後の税務調査で、5年前の帳簿を呈示できなかったため、手ひどい罰金を払わされたケースもある。
実務的には、決算書や申告書は永久保存、帳簿は10年、そのほかの書類は法人税法の規定に準拠して5年もしくは7年としている場合が多い。
Ⅱ-7.税務署に届けておこう!
会社を設立したら、本店所在地所轄の税務署に届け出よう。届出が遅れると、税務上の特典が受けられなかったり、罰金が取られることもある。届出 申請書式は国税庁のホームページからダウンロードできる。主な届出申請書類は以下のとおりであるが、このほかに、消費税の各種届出書を提出した方がトクな場 合もある。これはケース・バイ・ケースの対応になる。なお、県税事務所や市役所にも、設立届けの提出が必要である。
◆設立届出書
定款の写し、登記簿謄本、株主名簿の写し、設立当初の貸借対照表、本店所在地の略図等を添えて、設立2ヶ月以内に提出する。
◆青色申告承認申請書
原則として設立3ヶ月以内に提出する。青色申告でなければ、欠損金(税務上の赤字)を翌事業年度に繰り越せる等の恩典が受けられない。
◆給与支払事業所等の開設届出
たとえアルバイトでも給与を支払う場合、開設1ヶ月以内に届出が必要。なお、従業員が常時10人未満なら、源泉所得税の納期の特例に関する申請書等も提出する。源泉所得税の納付が毎月から年2回となる。
Ⅱ-8.給料を支払うとき
給料を支払うときは、原則として、会社は所得税を差し引いて支払う必要がある。正社員やパートなど関係なく、一定限度額を超える支払いに必要な手続きである。サラリーマンの経験のある人なら、思い出してほしい。毎月、所得税が引かれていたハズ。
差し引く金額は、雇用関係などによって違う。
雇用期間が2ヶ月以内で毎日、給料を支払うなら、1日当り9,300円以上は所得税を差し引く(源泉徴収税額表の日額表丙欄参照)。
雇用期間が2ヶ月超で毎日、給料を支払うなら、必ず税金を差し引く(同日額表乙欄)。
毎月、給料を支払う場合も、必ず税金を差し引く(同月額表乙欄)。
ただし、「給与所得者の扶養控除等申告書」を、雇われた人に提出してもらうと、甲欄適用者となり、扶養家族がいなくても、88,000円までの月給なら、差し引く必要はない。
このあたりは少し難しい。税理士や最寄の税務署などで確認すること。
Ⅱ-9.不良債権の税務処理(前編)
法人税法においては、売上債権等の回収をあきらめたからといって、あきらめた金額が損金になるわけではない。一定の要件を満たすことが必要である。
得意先の振り出した手形が銀行停止処分を受けた場合、その額の半分を損金に計上することができる。不渡りが1回では銀行取引停止処分にならないので、損金にならない。
会社更生法や民事再生法の申立て等があった場合、申立て等をした会社に対する金銭債権(売上債権や貸付金等)の額の半分が損金になる。さらにその後、更生計画や再生計画の認可決定等があった場合、切捨てられる金額や5年を超えて弁済される部分の金額等が損金になる。
破産の場合も、申立て時に、その金銭債権の額の半分相当額が損金になり、その後、最終配当により損失が確定したときに、切捨てられる金額が損金になる。
任意整理等の場合、債権者集会の協議決定等で合理的な基準によって切り捨てられる金額や、5年を超えて弁済される部分の金額等も損金になる。
<続く>
Ⅱ-10.不良債権の税務処理(後編)
前編のように、得意先等が倒産等した場合、損金になるか否かの判断は比較的容易であるが、倒産等はしていないが、実際には回収不可能な場合も多い。
まず、債務超過等の会社に対する金銭債権については、その会社の資産状況が劣悪であり、支払能力が乏しいなど一定要件を満たす場合、回収見込みのない金額や、書面により通知した債権放棄額は損金になる。
得意先と継続的な取引を停止した後1年以上経過した等の売上債権で、担保がない場合や、同じ地域にある得意先への売上債権の合計額が取立旅費等に満たず、催促しても支払わない場合は、売上債権から備忘価格(1円)を控除した金額が損金になる。
不良債権の税務処理は、事実の認定や処理の判断において、かなり専門的で厳格な判断が必要である。保証人がいる場合や担保物権を取っている場合等は、なおさらである。税務調査でも、よく問題となる。損金とするには、会社は相応の回収努力等を実施し、さらに書面にて資料等を準備することが必要である。安易な損金処理は禁物である。
Ⅱ-11.売上の分割計上
売上を計上するタイミングは、原則として、モノの引渡しやサービスの提供をしたときである。売上代金をもらったときではない。請求書を出した時点と思っている人も多いが、請求書の送付とは直接関係ない。
ところで、既にモノの引渡しやサービスの提供は終了しているが、得意先の資金繰りや予算の都合などで、いくらかずつ何ヶ月かに分けて、請求書を出して欲しいと要求されることがある。
この場合、売上は請求書の送付毎に分割して計上するのではない。最初の請求時(厳密には、モノの引渡しやサービスの提供の終了時)に全額計上しなければならない。最初の請求と最後の請求が同じ事業年度内に終われば、結果的に事業年度の売上合計は変わらいが、決算期を挟んだ場合は、未送付分の請求書についても売上を計上しなければならない。税務調査のときにも問題になる。
もっとも、対応する売上原価も当然、計上することになる。
Ⅱ-12.1台25万円のパソコンも経費に?
一定の中小企業が取得や製作等した後に事業に使用した1個または1組当たり30万円未満の減価償却資産であれば、一事業年度につき300万円を限度として、一時に損金算入(経費処理)することができる。
減価償却資産とは、パソコンはもちろん、一般の工具器具備品、車両運搬具、機械装置、建物や建物付属設備なども含まれる。
もちろん、この特例を適用しない場合や300万円を超えた場合は、従来どおり、20万円以上であれば通常の減価償却資産として所定の耐用年数で償却、10万円以上20万円未満なら一括償却資産として3年間均等償却することとなる。